最近の将棋界に思うこと

渡辺明棋王(九段、一世永世竜王)がA級から陥落した。実力的にはA級もB級1組も大差ない、23人の中で豊島八段と羽生竜王が別格、後は入れ替わる可能性が常にあると思っている。だから棋力から言えば、渡辺棋王はそこまで悲観することもないとは思うのだが、何しろA級は下位二名にならなければ残留出来るのに対し、B級1組は上位二名にならなければA級に上がれないので、実際のところ、A級に留まるよりも、B級1組から上に上がる方がはるかに難しい。
久保利明王将が、B1に落ちて一期でA級に戻ってきて、今期は名人挑戦者争いに加わると言うのもなかなかしぶとい。
B級1組は、今期は丸山九段が降級になったのが残念だ。避けられないとはいえ、名人だった人が、B級2組に陥落するのは加藤一二三九段以来ではないだろうか。森内俊之九段(十八世永世名人)のように、いさぎよくフリークラスに転出する人もいれば、加藤一二三九段のように力尽きるまで指し続ける人もいる。加藤九段も2002年、62歳までA級にとどまっていたが(本当に驚くべきことだ)、その後の落ち方はずるずるという感じだった。丸山九段も出処進退を考えるべき時かも知れない。
A級に昇格するのは糸谷哲郎八段、というか元竜王だが、ようやく来た、と言う感じがする。森信雄七段門下の出世頭だが、山崎八段が上がり切れないうちに先にA級入りすることになった。門下でA級入りするのは村山聖九段以来である。こういう節々に、村山九段が生きていれば、と死んだ子の年を数えるような思いがする。


2016年末以来の三浦弘行九段冤罪事件では、森門下も、片上大輔五段と千田翔太六段も判断を誤ったと言える。
元々三浦九段については、後輩に勉強会の成果を聞き出すなどの行為について、渡辺明永世竜王が激しく罵倒していたなど、評判の悪さがあった。私は、別に上司部下の関係があるわけでもなし、棋士が強くなるために最善を尽くして何が悪いと思っていたのだが、渡辺明永世竜王の正義意識、将棋道みたいなものに共鳴する人は多かった。当時は2ちゃんねるでも、悪役なのは三浦九段の方で、渡辺永世竜王はヒーロー扱いだった。
言ってみればある意味三浦九段は「嫌われ者」であって、三浦九段を嫌っていないとしても「藤井システム」の藤井猛九段は三浦九段の兄弟子だが、ちょっと距離が掴めていない感じもあったし、扱いが難しい感じもあった。
三浦排除とまではいかなくても、どちらかと言えば三浦九段への悪意がそもそも将棋界に通底していたのだと思う。
だから渡辺永世竜王が告発に踏み切った時に、橋本崇載八段みたいな慌て者がやんやと喝采したのだろうし、森門下もここぞとばかりという風潮があったのだと思う。
社会組織としては本当に恥ずべきことだ。
今までここで出した名前の面々は謝りもし、愚かではあったが竜王戦まで間もない時期で早急な判断を迫られたという事情もあって、三浦九段も了としていることから、私としてはこれ以上、あの件で彼らを責める気はない。
ただし久保王将だけは別だ。
彼は勘違いの告発、もっと言えば虚偽の告発をして三浦九段を陥れようとして、しかも謝罪もしていない。
本当のところ僕は彼は刑事告発されてしかるべきだと思っている。
B級1組に陥落したのを一期でA級に復帰して名人戦挑戦者になろうかと言うその棋力と精神的なタフネスは、棋士としては称賛されるべきだが、将棋も結局は社会の中にあるのだ。いくらなんでもこういう人が名人になってしまえば、その汚点は連盟に永遠についてまわる。
彼には絶対に名人になって欲しくない。