ハリー王子の爵位、称号について

メーガン妃との結婚を機に、ハリー王子にウェセックス公位が叙爵されることになった。
王族に公爵位が与えられることを王族公爵と言うが、この公爵位そのものは、他の公爵位と違いはない。子々孫々に世襲されてゆく。
それならば、代々、英国の王子たちがこしらえた公爵位がさぞ多かろうと思われるかも知れないが、案外そうでもない。
第一に、婚外子には爵位の相続権がない。
第二に、女子、女系男子には爵位の相続権がない。
つまり、初代の嫡出子である男系男子でなければ相続権、継承権がないので、生まれた子が娘が二人、なんてことは普通にあるので、そう言う家は貴族家としては断絶する。エリザベス女王の次男のヨーク公には娘二人しかいないので、ヨーク公家は一代限りなのはほぼ確実である。
王族に与えられる公爵位として頻出するのは、クラレンス、ヨーク、ケント、グロスター、カンバーランド、ウェセックスあたりなのだが、これらは各王子に与えられた後、貴族家としては断絶した結果、繰り返し使用されているわけである。
ジョージ6世はジョージ5世の次男として、ヨーク公家を創設したわけだが、これは第7期のヨーク公家で、ジョージ6世として即位することによって、ヨーク公家は消滅した。そしてエリザベス2世女王の次男のアンドルー王子が第8期のヨーク公家を創設したわけである。


爵位保有者が王位に即位すれば王位に統合されて爵位は消滅する。これをマージという。
エリザベス2世女王の夫のエディンバラ公(第3期エディンバラ公)の嫡男はチャールズ皇太子であるから、この公爵位は将来的には王位に統合されて消滅する。エディンバラ公名跡を残したいと考えたエディンバラ公フィリップ王子は、末息子のエドワード王子が、フィリップ王子の没後にエディンバラ公に叙されるのを望んだ。
そのため、エドワード王子は将来的にエディンバラ公になる予定なので、現在は公爵位保有しない、ウェセックス伯爵なのである。その場合でも、エドワード王子は現在のエディンバラ公位を相続するわけではなく、一端、エディンバラ公位はマージされて消滅し、第4期のエディンバラ公として叙爵されることになる。


特殊な、例外的な相続、継承のされ方をする爵位もある。
ランカスター公爵位コーンウォール公爵位、ロスシー公爵位、ウェールズ大公位である。
これらは通常の爵位ではなく、君主・皇太子の地位に伴う付随称号であるので、通常の意味での継承はされない。


ハリー王子はサセックス公に叙される前は、ウェールズ大公の扶養家族扱いであった。
王族の範囲は、
・君主の子
・君主の息子の子
・皇太子の子
であるから、ハリー王子は王族なのだが、ハリー王子の子供たちは王族にはならない。ただし父のチャールズが即位すれば、王族になる。王族の範囲は、生まれた時点で絶対的に決まるものではなく、王位の位置によって、相対的に動く。
例えば、女王-チャールズ-ウィリアムの順で、順当に王位が継承されれば、ハリー王子の子は、「君主の息子の子」になるので、将来的には王族になるが、もし、女王よりも先にチャールズが逝去すれば、ハリー王子の子は王族ではなくなる。
それでいて、王族であるアンドルー王子やアン王女よりは王位継承順位は高くなるのだから、じゃっかんのややこしさが生じる。
今現時点で、厳密には王族の範囲の中にはいないのは、ウィリアム王子の子、ジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子らもそうなのだが、彼らに関しては、直系の王族であることから、女王が勅令で特別に王族とするとの命を発している。
ハリー王子は次男であり、傍系になるので、無理に王族扱いされるかどうかは分からないのだが、公務負担等を考えればハリー王子の子が王族でないというのは王家側にとって支障が出るだろう。
その場合は、王に即位しているはずのウィリアム王子によって、勅令が発せられることになるだろう。


エリザベス2世女王は矍鑠としていて、あとしばらくは在位しそうである。おそらく彼女が王位を去る前に、ハリー王子の子は生まれるだろうから、そうなった場合、仮にジョンという息子が生まれたとしたら、どう呼ばれるのかと言う問題が生じる。
ジョン王子とは呼ばれない。王子ではないのだから。その場合は通常の公爵家の嫡男として、ダンバートン卿と呼ばれるだろう。
ハリー王子は、サセックス公に叙されると同時にダンバートン伯爵に叙されている。ハリー王子に嫡男が生まれれば儀礼称号として、嫡男はダンバートン伯爵と呼ばれるだろう。