解散小考

内閣に解散権は本来無い。あるのは第六十九条に基づく解散手続きだけである。
第七条の天皇の国事行為としての解散は、第六十九条の流れに従ったものと解されるべきであって、内閣に能動的解散権を与えている現在の第七条解散解釈は、違憲であると言わざるを得ない。
ドイツでは内閣に能動的な解散権が与えられていないので、内閣が解散を行いたい時は、議会でわざと内閣不信任決議を可決した後に解散を行っている。
この行為は実際的には能動的解散権と同義なので、違憲であるとの見解もあるようだが、手続きとしては整合性を持っている。
憲法に能動的解散権の規定がない以上、それが内閣にあるとするのは拡大解釈と言うべきであって、日本国憲法では並立的な三権分立を採っていない。
国会が最高の国権機関なのであって、立法府は行政府や司法府に優越している。
内閣が解散手続きに入るためには、国会の不信任決議という国会の意思による行動が必要なのであって、この手続きは内閣が国会に対する抑制というよりは、国会が不信任決議を濫用しないための憲法による国会への抑制とみなすのが妥当だと思う。
内閣の意思によって解散を行うのは、国会の優越を毀損する行為だと思う。
とは言え、ドイツの例に見るように、議院内閣制は議会与党と内閣与党が一致する政治制度なので、与党の多数意思が一致しているならば、解散は可能であるように見える。
単なる手続き的な言葉遊びに堕さないためには、更に進んだ規制が必要である。
例えば、議員選出時に首相が属していた党は内閣不信任決議案を提出できない、新党による抜け道を潰すためには議員は任期中は所属政党を移動できない、などの措置が必要だと思う。
現実には第七条解散はなし崩し的に行われているが、これは憲法はもとより司法解釈で認められたものではなく、司法は統治行為論から解釈をしていないだけであって、結果として司法は違憲状態の横行を黙認していると言える。
これを正すには立法府による立法行為での規制しかなく、前記の規制込みで、衆議院解散法の成立が必要だと考える。