Lady Thatcher

JB Press のこの記事、
サッチャー革命は無駄だったのか?
を読んでいて、本論と関係の無い部分が気になった。

サッチャー夫人(現在はレディーの称号を持つ)は、高インフレ、成長停滞、好戦的な労働組合を特徴とする国家の衰退を反転させる決意を持って首相に就任した。

の部分だ。この記事はフィナンシャルタイムズのマーティン・ウルフ氏のコラムをそのまま翻訳していて、フィナンシャルタイムズのサイトに元記事があった。
The post post-Thatcher era begins
さて、その記事で該当部分を探すと、

Mrs (now Lady) Thatcher entered office determined to reverse a national decline marked by high inflation, slow growth and trade union militancy.

とある。ミセス(現在はレイディ)サッチャー、を“サッチャー夫人(現在はレディーの称号を持つ)”と訳している。
原文では、過去にはミセス・サッチャーであった人、現在はレディー・サッチャーである人、という意味合いであるのに対して、訳文では、ミセス・サッチャーが現在はレディーの称号を持つ、と言う意味合いになる。
微妙に意味が異なる。
それ以外にも、「レディーという称号」なる言い方にも危うさを感じる。


現在、マーガレット・サッチャーは二通りの意味において Lady Thatcher である。Sir Dennis の配偶者としての Lady Thatchter と、Baroness Thatcher としての Lady Thatcher である。
つまり、Sir の配偶者呼称としての Lady と、Lord の女性称としての Lady である。
現在のサッチャーを呼称する時は、「サッチャー男爵」あるいは「サッチャー卿」というべきで、レディーは男爵と言う地位に伴う敬称であってそれ自体が独立した称号ではない。
彼女はレイディという称号を持っているのではなく、男爵の爵位を持ち、それを卿の意味としてレイディと呼称するということである。