宇宙飛行士の夫

宇宙飛行士・山崎直子さんの夫、山崎大地さんが複数のメディアで、「宇宙飛行士の妻」を支えるためにご自身の夢を諦めなければならなかったこと、その辛さを語っている。
夫婦のありようは本当に難しいと思う。
日本人女性の宇宙飛行士といえば、先人に向井千秋さんがいらっしゃるが、そのご夫君の向井万起男さんはひょうひょうと妻を支え、新しい夫婦のあり方として賞賛されたものだった。
おそらく向井夫妻の場合は、医学と宇宙飛行士(向井千秋さんご自身医者であるが)という直接、関わりが無い分野でそれぞれ専門性を持っていたのがよかったのだろうと思う。
山崎大地さんの場合は、ご自身にも高度な専門性がありながら、隣接する分野で妻が着実にキャリアを築いてゆくのを支えなければならないという、「妻の成功がそのまま自分のキャリアの停滞と一致してしまう」不幸な状況があったのだろうと思う。
もっとも、それぞれにキャリア志向がある夫婦ならば、状況は違えども同じようなことがあるはずであり、山崎夫妻の場合は「夫が妻を支える」と言う点と、妻のキャリアが宇宙飛行士であるという点が特異であって、夫のキャリアのために「我慢を強いられている妻」ならばごくありふれている。
男であれ女であれ、自分が特に強いキャリア志向を持っているならば、配偶者としてキャリア志向を持っている人は相応しくない。
せめて分野が競合しないか、時間の融通が比較的可能でなければ、難しい。
ところがキャリア志向の人たちはえてして、キャリア志向を持つ人たちに魅力を感じるものだから、需要と供給が一致しないのである。
配偶者には自分のキャリアを支えてもらいたいと思うのであれば、それを求める側もそれなりの覚悟が必要である。
1.配偶者を一生「養う」覚悟
2.「養われている」配偶者を尊敬する覚悟
山崎夫妻の場合はどちらもキャリア志向であったこと、双方のキャリアが両立できず、一方が全面的にキャリアを諦めなければならなかったと言う点で、お互いの愛情はともかくとして不幸な組み合わせであったというしかない。