映画「靖国」上映中止騒動について

経緯としては以下のよう。

1.週刊新潮が映画「靖国」を反日映画と報道、文化庁から助成が出ているのを問題視する。
2.稲田朋美代議士らが「一種の国政調査権」を理由として配給側に事前試写を要求(対象は国会議員有志)。
3.配給側が全国会議員を対象として試写を実施。
4.右翼による上映予定映画館に上映中止を求める抗議活動が行われる。
5.複数の映画館が上映予定を取りやめる。
6.言論の自由の危機との声があがる。
7.複数の映画館が「じゃ、うちでかけましょうか」と言い出して、結果として当初の予定より拡大して上映される見込みになる。めでたしめでたし←今ここ。

一個一個を抜き出せば、大きな問題があるのは「週刊新潮はなにを理由としてこの映画を反日と言ったのか」「稲田朋美代議士の言う、一種の国政調査権とはなにか」という点。
特に、国政調査権は行使するには主体と手続きにおいて制限があるから、この場合、どう考えても稲田朋美代議士の行動は国政調査権とは関係がない。
「私個人としては問題を確認しておきたいので、事前に試写を見せていただけないでしょうか」
とお願いするぶんにはセーフかもしれない。そんなの一般試写で見りゃ充分だろと思うけれど、文化行政とは何の関係もない人なので、それだけなら権力を利用して、圧力をかけたとまでは言えないと思う。
ただ国政調査権による請求と相手側に伝えていたならば話は別。端的に言って、それは虚偽でしかない。ありもしない権限を偽って、なにかしらに介入することは、詐称以外の何物でもない。経緯と事実を調査し、自由民主党は党内での処分をまず検討すべきだろうし、私としてはこれは懲罰委員会にかけられる事由だと思う。
彼女に対して言いたいのは「祖国を愛している」からといって何をしても許されるということでは決してないことだ。そんなことは法曹人である彼女なればなおのこと承知のはずだが、自らの言動を律する意識が欠けているか、不備があるのではないか。
そんなことでは信頼に足る政治家とは呼べないし、尊敬に値する日本人からは程遠い。
彼女は日本を愛していると言うが、日本国は法治国家である。その意味をもう一度、噛み締めて欲しい。