ネズミ算式で増える猫

ニコニコ動画の人気作品、「ふちゃぎん家」を見ていると、恐ろしくなる。
増えてゆく恐怖。
最初は一匹だった猫が、拾ったり産まれたりしてあっというまに軽くテンオーバー。
食事時に「めしくれ、めしくれ」と騒ぐ彼らを見ると、「数の暴力」という気さえしてくる。
うちはチンチラを番いで飼っていたが、雌猫がどうも虚弱で、生きて産まれてきた子はいなかった。残念だったが、それでよかったのだろうと思う。
なぜ猫はかくも勢いよく増えるのか。
ネズミであればもちろん捕食者からの捕食圧に耐えるためなのだが、猫に捕食者はいるのだろうか。
よく、子猫がカラスに食われていたりするが、ごく例外的な事例というしかない。カラスにとっても反撃の危険がある猫より、他のものを食ったほうがいいだろうし。
数が多ければいいというものではない。
ハクトウワシはだいたいふたつの卵を産み、二羽の雛が孵るが、先に生まれた一羽が後から産まれたものを殺してしまう。親はそれを見ているだけだ。
あらかじめ殺させるために、スペアとしてふたつの卵を産むだけであって、一回の繁殖で一羽が巣立てば十分なのだ。
よほど餌が豊富な時ならばともかく、二羽をそのまま育てればどちらも餓死してしまうだろう。
ハクトウワシにとっては、一度にふたつもみっつも産卵するなどナンセンスだろう。
産まれる子の数と、捕食ヒエラルヒーの位置は関係があるようで厳密ではない。ほとんど捕食される危険のない狼などの肉食動物であっても、多数の子を産むし、捕食されるだけのナマケモノのような動物でも一度に一頭きりしか子を生まないものもいる。
猫の場合はなわばりを持つのだから、捕食による淘汰圧よりも、獲物の数の方が生存には関係してくるはずだ。
猫の成長の早さを思えば、せいぜいが一匹の雌猫が生涯に四匹も産めば充分なはずで、明らかに猫は必要以上に産んで、個体を蕩尽させている。
これは犬も同じことだ。
べつだん、種の維持にとって無駄なのが不思議だというのではない。遺伝は種の保存を目的としない。
ただ、通常の自然淘汰から言っても、過剰な数の個体は共倒れを招きやすいのだから、適当なところで抑制されるはずだが、猫や犬はどうも「野生」が壊れているように見える。
なにか理由があるはずだが、いったいなんだろう。