度を過ぎたペイリン叩き

ペイリン候補、手痛い知識不足 牧場で「緊急合宿」 - asahi.com
リンク先の記事で、ペイリン氏の「風変わりな発言」例として挙げられた以下のケース、

■アラスカからロシアが見える?

Q:最近のロシアの動きに、どんな識見をお持ちですか。

A:彼らは我々と隣同士です。実際、アラスカからはロシアが見えるんです。(ABCニュースのインタビュー)

プーチン氏はアラスカに向かう?

Q:ロシアと交渉をした経験はありますか。

A:通商の派遣団が行き来していますよ。安全保障上も非常に重要です。プーチン(首相)が空から米国に入ったら、まずどこに行くでしょう。答えはアラスカですよ。(CBSニュースのインタビュー)

■具体的にあらゆる努力?

Q:具体的に答えてください。あなたはどのように民主主義を世界に広げるつもりですか。

A:具体的に、私たちは、自由と独立と寛容と平等を求める人々のため、民主主義を広げる可能なあらゆる努力をします。

これらを読む限り、それほど風変わりでもなければ、政治家ならば普通の受け答えだと思う。
最近ではタレントのDAIGO氏の祖父と言った方が通りがいい、元首相・竹下登氏は言語明瞭意味不明瞭と言われた。問われれば何に対しても、明瞭な言葉遣いで長々と答えたが、意味はまったく理解不能だった。
それがいいかどうかはともかく、言葉を連ねながら意味がまったく理解できない、どうとでも受け取れる(逆に言えば、後からどうとでも言い逃れが出来る)話し方をするのは、政治家や思想家の芸のうちであり、ままあることだ。
クレーム処理をしていた友人に聞いたことがあるのだが、相手側がとにかく怒りを吐き出したい時、真摯に対応しつつなおかつ一切の言質をとられないために、「話をしながらもそれとなくかみ合わない」対応をするのもテクニックのひとつだそうで、大事なのは会話をすることであって意味をやりとりすることではない、そうした考えもあるのだなと目を開かされた思いがした。
ほとんどあらゆる物事に、賛成派と反対派があって、副大統領候補としては、「いかに自らの意見を表明せずに、賛成・反対双方から支持を獲得する」ことが重要になるわけだ。
そうした必要からみれば、ペイリンの対応は愚かしいどころかむしろその逆で、私はこの人は非常に頭がいい人なんだなと思った。
合衆国大統領選挙がかような、政治的なテクニックが重視されるものであっていいのかどうか、もちろんそういう問題もあるわけだけども、現にそういう傾向はあるわけで、ブッシュのように極端な信条を打ち出す人のほうが稀、ブッシュにしても2000年の選挙の時は、「穏健派」として登場し、振舞っていたわけで、べつにペイリンだけが「曖昧さ」を非難されるものではない。
そうした「政治の文脈」なるコンテクストに無知な人たちが、ペイリンを叩きたいメディアの意図に踊らされて、ああだこうだとコメントをつけているのも、笑止というしかない。