国籍法におけるDNA鑑定問題について

id:kibashiri氏の、
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20081122
を読む。ブックマークタグで「これはひどい」が雲霞の如くつけられているかと思えば、案外好意的な意見も多いよう。
氏の誤解を指摘するコメントもついているが、何か氏がレスポンスするかと思って数日、見守っていた。しかし動きが無いようなのでこの記事を書くことにした。
国籍法改正についてDNA鑑定が義務化されていないことを不備とする意見は多いが、それらのうち、少なくとも法務省が国会答弁で提示している、それによって生じる問題をどうやって解消するのかまで考察している意見は皆無に等しい。
考えられる問題点を列挙してみる。


a.物理的にDNA検体を得られない場合はどうするのか。
既に多くの人が指摘しているように、国籍確認は民事であり、民事ではDNA鑑定は強制不可能である。子を認知している父親がすべて子に好意的であるとは限らない。
日本国籍を取得させないために父親が検体提出を拒否することもあり得る。
父親の意思、好意的であるか否かで、子の国籍確認が左右されるのは、明らかに法の下の平等に反している。
また、父親が既に死亡しているなどして、検体が得られない場合はどうするのか。
b.経済的負担は誰が行うのか
現在、DNA鑑定の相場は14万円前後、需要が高まれば負担する費用は高騰することが考えられる。仮に20万円程度だとして、これは途上国であれば年収に匹敵する場合もある。経済的な要因によって国籍確認が出来ないとすれば、これもまた法の下の平等に反する。
国が負担するとして、父親側に充分な社会的身分があり偽装の疑いはほとんど無いような場合は、手間としても費用としても無駄である。
c.認知の意思主義との整合性はどうするのか
d.母親が日本人である場合との比較で平等性が毀損されないか
すべての人が病院で出産をするわけではない。どこかから赤ん坊を連れてきて、この子は私の子ですと女性が言い、出産届けを出せば「偽装」は容易である。にもかかわらず、母親が日本人である場合は検査が免除され、父親が日本人である場合は検査を要件とするならば、これもまた法の下の平等に反する。


他にもあるかも知れないが、DNA鑑定を義務化する時、必須であるのは父親やその血縁者が鑑定を拒否できない法律の整備である。
他のことは解釈でなんとかなるかも知れないが、鑑定を義務化するならば検体は確実に入手されなければならない。
id:kibashiri氏の当該記事を読んでいて、偽装の疑いが増す例として、以下の部分があった。

 その中で、日本人の子供をはらみ父親として認知させる方法もありましたが、上野当たりで飲み歩く客の大半は妻帯者であり、中には離婚して中国人と再婚する者もいましたが、家庭を守るために認知すら拒むものが大半でありましたので、この方法は当時の彼女たちにもリスクをともなうものでした。

 しかし、結婚という縛りが解ければ、これは間違いなく、不正斡旋ビジネスが起こることになりましょう。

 客の子供を作り日本人不労者などから金で認知してもらえれば簡単に日本国籍取得できてしまうわけです。

 ブローカーに戸籍まで金で売る男達が、何も戸籍を汚さない他人の子供の認知をお金目的ですることは、十分にあり得ます。

父親が日本人ならばその子は非嫡出子であろうが生得的な日本人である。
日本人の子を産めば、その子が日本国籍をとり、母親が日本に滞在可能になるのはあたりまえの話であって、ここまで筋違いの例を挙げている人は実に珍しい。
「馬脚をあらわした」というべきだと思ったが、この程度の知識しかない人が一枚噛んでカオス化しているのが国籍法をめぐる「論争」である。
氏は国の将来を思う前に、常識的な知識を身に付けるのが先決ではないかと思った。