参議院がシステム上の誤謬であるということ

はてな匿名ダイアリー
http://anond.hatelabo.jp/20081228162414
上記のような記事があった。はてなブックマークコメントにid:titton氏のコメントで、「titton なんというか…「混乱」を唾棄すべきもとしか見れない人が多いのが問題。混乱は流動性の源であり、常にそれと向き合うことが政治家を切磋琢磨に駆り立てる」というものがあったが、過剰な混乱を無批判に是とする、もしくは現状の政局から参議院の存在意義を見出すひとつの立場の表れがはてな匿名ダイアリーの如き意見となるのだろう。
それだけにいちいち反論しておくのは有為と思われる。
民主主義における選挙とはビルトインされた革命である。民意が定期的に的確に反映されるならば、実際の革命に走る民意としての革命の必然の度合いは小さくなるのであり、議会主義そのものが混乱を抑制し、混乱の中から民意を抽出する手段であると言える。
従って混乱を制御するという考えが国家システムの中に現れるのは当然であり、実際、議院内閣制の国の多くでは、日本と比較すれば議会のありようにおいてその思想が強く、その考えの元において設計されていることは指摘した。
以下は該当の匿名ダイアリーの提出した意見に対して反論をする。

「ああ、チェック機能というのは、こういう非常の際に、はじめてそのありがたさが分かるものなのだ」、と。

それは非常時ではない。政治システム上の必然である。民意を言うのであれば3分の2の議席を与党に与えた有権者の投票行動に求めるしかないのであって、それに基づく行動を不是とするのは民意ではなくただの個人的な見解である。
この人はこうも言っている。

それをシステム上の欠陥と称しているが、こういう状況になれば速やかに解散するというのが本来の「システム」ではないか。従って論旨に従えば、欠陥とはこの状況でも政権に居座り続けることが許されるという方向について言うべきだと思うがどうなのか。

解散権は内閣総理大臣に属し、ねじれていれば解散をするというシステムは無い。
解散が「なされる」と規定されているのは内閣不信任決議が国会で成立して(指名において衆議院が優越するのだから具体的には衆議院で)、内閣がそれを是としない場合のみである。
参議院に対しては解散権は及ばない。
一院制であればこの匿名ダイアリー氏の言っていることはあてはまるが、解散の及ばない参議院の状態を打破する目的として衆議院を解散するという倒錯したことを言っているのであり、それは奇しくも郵政解散を行うにあたって小泉元首相が言ったのと同じことである。
彼は民意を問えば参議院はそれに従うと信じると言った。
まさしくそれはかくすればきっとこうしてくれるだろうと信じる、という次元の期待レベルでしかなく、そうとはならないこともあり得る設計になっているのがシステムの問題であるということだ。
民意は選挙の結果という形でしか示されないので、それがいかなる意味を持つのかは解釈はそれぞれである。
両院の構成がねじれている場合、仮に衆議院が解散されて政府側が勝利したとしても、参議院における民意はまた別とも言え、党が異なる場合ははいそうですかとはならない可能性が高い。
そしてシステムの問題は状況に関わらず存在するのであって、

ハッキリ言って一般論にぼかして書いているが、自民に優越していて欲しいというごくごくポリティカルな意識を背景に書いているとしか読めない。そういう語り方を、確かご本人は批判していたと記憶するのだが。

は下種のかんぐりという以上のことはない。
民主党自民党が逆であっても同様の事態は生じるからである。
現在の与野党の状況だけを見て、有利不利を語っているのはまさしく匿名ダイアリー氏であって、いうなればそれこそがポリティカルな意識であろう。
再反論を書くならばトラックバックを送っていただきたい。


ところでブックマークコメントでは、実際に改正するとなれば憲法からいじらなければらなないので漸進的に改革するのがよろしかろうとの意見もあった。
もっともな意見だと思う。私が先に提示したのは害悪の内容であって、まずはそれを認識する、先進国でも相当に特殊な状況だということを知らなければ改革の必要も理解されないので指摘したまでのことだ。
漸進的に何が出来るかを考えてみたが、憲法をいじらなければ難しいとの結論に結局は達した。
第59条、衆議院の3分の2再可決規定を残したまま衆議院の権限を強化するには、何らかの形で参議院に対する衆議院の影響を担保しなければならないが、それは両院議員の国民による選出規定や、両院議員兼務禁止規定などによって難しくなっている。
つまり参議院議員衆議院議員が選出する、または参議院議員(の一部)を衆議院議員が兼ねることができれば、第59条を維持したまま衆議院は国会の統一を維持した優越が可能になるが、それは憲法上できない。
第59条をいじるならば、どのみち憲法改正は不可避であり、この問題は憲法を改正しない限り、改善は望めないというしかない。