NHKとインターネット

ラジオから白黒テレビへ、白黒テレビからカラーテレビへ、地上波から衛星放送へと放送フォーマットが変わるたびに、NHKは新たなビジネスモデルを展開し、収益の確保を図ってきた。公営放送にしては非常にビジネスマインドが強い企業である。
とは言え、NHKの収益の根幹が受信料収入にあるのは変わらない。ただし、この収入は今後、縮小することはあっても拡大することは見込めない。視聴者のライフスタイルの変化、受信料を徴収する費用対効果の減少、インターネットとの競合、そして何よりも日本の人口が縮小に向かう以上、受信料収入のみに頼っていては、将来性がない。
もちろん、受信料は民放にはないNHKの強みであって、今後も有力な収益の柱ではあるだろう。NHKがこれを手放すことは考えにくい。ただ、その徴収スタイルには変化はあるかも知れない。
BBCのように受信機購入時にあらかじめ費用を上乗せするようなやり方、これは放送ビジネスの拡大と収益が必ずしも比例しないことから、成長期には望ましくないモデルであるが、コストはさほどかからない。
安定的な収益の確保に軸足を移すならば、こちらのやり方が望ましいと判断する時期がいずれ来るのではないか。
インターネット事業への進出に、NHKが消極的であるのではない。
NHKは、TV放送で受信料を確保した上で、新たな収益源として、インターネットに着目しているのだが、これを押しとどめているのは民放であり、放送法である。
すでにNHKオンデマンドは、アーカイヴ資産について、「通信」することを放送法改正により可能にした。これには規制緩和の圧力と、何よりも視聴者の要求に応えるという大義名分があった。
今回、NHKNHKクリエイティブ・ライブラリーなる素材提供サイトをオープンしたが、これもNHKが通信事業に展開すればもっともっといいことがあるよ、と国民に宣伝するための材料である。
NHKの場合は、インターネット事業が拡大し、結果として視聴率が全般に低下したとしても、受信料収入の低下には直結しないのだから、民放とは利害がまったく異なっている。
通信と放送の融合は、NHKにとってこそ、ふたつの分野にまたがる巨大企業となるべきビジネスチャンスであって、この有利な位置は、NHKが公営放送であるという一点によって担保されており、民業圧迫ではないかとの声も高まるだろう。
しかし、そもそもを考えれば民放とても免許事業なのだから、公営ではないにせよ、公共資産を使ってビジネスを展開する公共性の強いビジネスである。
電波オークションが実施されていない以上、果たして純粋に民業と言えるのかどうか疑問が残る。
現在の民放の人件費等の高コスト体質を鑑みれば、自由競争が徹底されたならば、現在の民放のコストの半分以下でも事業展開できる企業も出現可能だろう。
それをしていない以上、民放があたかも民業のような振りをするのは限りなく虚言に近い。
今後、NHKが通信事業に本格的に参入するとして、国外の視聴者からどのようにマネタイズするかが焦点になってゆくだろう。
・言語の問題
・通信速度の問題
スクランブルと支払い・徴収方法の問題
特にこれらをどうクリアしてゆくかが課題になると思われる。