龍馬伝、とか

去年はやたらと俳優の香川照之さんを拝見していた感がある。指折って数えてみれば、
「ディア・ドクター」
「劒岳 点の記」
20世紀少年
カイジ 人生逆転ゲーム」
沈まぬ太陽
と、去年は意識的に邦画をたくさん観たのだが、名を挙げた作品に香川さんは出演されていた。「また、出てる」「おお、また出てるぞ」と一観客としては驚くばかりで、香川さんは、邦画全盛期の頃の日活スター並みの多忙さだったのではあるまいか。
そして駄目押しのように年末のテレビドラマ、坂の上の雲である。香川さんは役の幅が広い役者さんで、どういう役を演じても説得力があるのだが、やはり「坂の上の雲」での子規役は特に傑出していたと思う。名優ばかりの同ドラマの中でも、白眉だった。監督が使いたがるのも、当然だろう。


http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100104
小谷野先生に拠れば、今年の大河では江戸史観に革命が起きたらしい。龍馬伝は録画はしたがまだ観ていない。
私もユートピア幻想的な昨今の江戸時代史観には抵抗があった。もちろん、どんな時代にも涙もあれば笑いもあるのは当然だが、飢饉のときに何万、何十万単位で農民に餓死者が出ながら、武士で餓死した者はほとんど誰もいなかったのが江戸時代なのだ。
その身分制度の苛烈さを見誤って江戸時代を論じるのは、ナンセンスというしかない。
ただ、龍馬の伝記を描くならば、土佐の特殊な身分制度を踏まえないわけにはいかず、NHKがリアリズムに回帰したというよりは、単にこの作品の特殊さだろう。
ところで、龍馬伝の原作は「竜馬がゆく」なのだろうか。まさか「おーい!竜馬」ではあるまいが。そういえば登場人物一覧を眺めていたら、武田鉄矢勝海舟役だそうで、いくらなんでも適不適があるだろうに。
庶民的な役を演じさせれば本当に素晴らしい俳優なのに、武田さんには少年めいた英雄崇拝の気分がどうもそのまま残っているようで、どうも柄ではない役を演じたがる傾向があるように感じる。
龍馬伝」にも香川照之さんは岩崎弥太郎役で出演するようだ。こちらは適役であるように思う。
龍馬伝」がどのようになるのかは分からないけれど、私が見たいのは、冷徹な国家のグランドデザイナーとしての西郷隆盛だ。当然、西郷が龍馬暗殺の主犯であって「欲しい」。
冷徹さがあればこそ、西郷の無私、が際立つのだが、「翔ぶが如く」で西郷を演じた西田敏行さんをただひとりの例外として、大河での西郷は、人情家の側面ばかりが強調されているように感じる。
渡辺徹さんが西郷にキャスティングされているようでは駄目だ。
NHKもたまには赤報隊のことにでも言及してみろやと思う。
少なくとも西郷は、天璋院から差しだされた島津斉彬の書状くらいで、一軍の方針を翻すような柔な革命家ではない。
今年の西郷は高橋克実さんで、どういう路線にでも対応できる融通さがあるようだが、今年は是非とも「ブラックサイゴー」路線でやって欲しいものだ。