Welcome Home

ただの機械だ。そう思おうとした。そう思うことに何ら不都合はないはずだ。実際、それはただの機械なのだから。
しかし故郷へ戻ってきたモノとしては、これまでの5倍も遠くへと足をのばし、満身創痍になりながらも、ともかくもこの星へと帰ってきた。
地球へ、地球へと目指した彼の孤独な旅を思う時、もはや彼をただの機械と見なすことは私には出来ない。
おかえりと呟いても、彼はもう酸化してしまって、大気を漂うばかりであろう。ならば大気に語りかければよい。おかえり、ふるさとへ。はやぶさは燃えて火の鳥となった。


http://news.bbc.co.uk/1/hi/science_and_environment/10196807.stm
http://www.bbc.co.uk/blogs/thereporters/jonathanamos/2010/06/a-perfect-view-of-the-asteroid.shtml
http://www.bbc.co.uk/blogs/thereporters/jonathanamos/2010/06/who-thought-asteroids-were-dul.shtml
http://hayabusa.jaxa.jp/e/index.html
JAXA と関係者の皆様方には祝意を表したい。
いまだ、イトカワのサンプルが採取できていたのかどうかは明らかではないが、往復のミッションを成し遂げただけでも計り知れない科学的な偉業である。
第一にも第二にも第三にも、これらはすべて関係者の方々の努力の成果であるが、私が何をしたわけではないが、今日ばかりは納税者の一人として、この国を素直に誇りに思おう。
宇宙開発は民生には直接結びつかないこともあって、財政的な視点からは特に糾弾されやすい分野である。そしてその糾弾にまったく理がないとは思わない。
そうした圧力もあって、宇宙開発は失敗が許されない事業である。実際には失敗してしまうことも多いのだが、失敗してしまえばそれは即座に税金泥棒との糾弾に直結する。
結果的に、より安全が期待できる、枯れた技術で宇宙開発は設計されることが多い。成功確率は高まるが、技術的な進歩は制約される。
はやぶさミッションはこの面において異例づくめで、事業内容はもとより、技術についても真に革新的な、野心的なものであった。
これは単に数ある宇宙開発事業のひとつではない。ここを起点にしてパラダイムシフトが起こりえる事業なのである。
JAXA はリスクをとって、ミッションをコンプリートさせた。
これは日本国民が人類に対して成した貢献のうち、最も大きなもののひとつとなるだろう。
成功したから言うのではない。こうした事業の単に数字だけでは表せない巨大な貢献について政府は考慮するべきである。
日本人の背骨を成す誇り、人類史の扉を拓く礎、そして何よりも科学を愛する子供たちを勇気づけること。
これらは今回、JAXA が成した真の成果である。
未来なくして私たちは生きてはいけない。未来を思うことなしに国は発展していけない。
科学を愛する子供たちがいなければ、私たちには未来はあり得ないのだから。