衆議院比例区定数削減問題

私はよく「小選挙区論者」と批判されたり、はたまた「比例代表制論者」と批判されることさえあるのだが、どうせならば正確に批判されたいものだ。
私が推している選挙制度小選挙区比例代表並立制、つまり衆議院議員選挙の現行制度であって、簡単に言うならば私は折衷主義者である。
「勢いのある政党にややボーナスが与えられ、政権交代が比較的容易になり、なおかつ少数意見もある程度反映させる」となると、現行制度に勝る制度はない。
選挙制度のメリットデメリットについては過去に論じたので、興味がある人は検索して欲しい。
この立場からすると、民主党参議院選挙の公約として打ち出した「衆議院における比例代表定数を180から100に削減する」との方針はまったく受け入れ難い。
衆議院過半数を政権党は占めれば良いのだから、240議席以上は基本的に無駄である。現在、民主党・無所属クラブは衆議院で310議席を占めているのだから、小選挙区制によるボーナス効果をこれ以上強めるべき理由はまったく無い。
むしろ「少数意見の反映」を目的として比例代表制の割合を増やすべきだろう。
今ここで、比例代表制定数を削減することに国家にとってどのような利があるのか、民主党には言えるものならば是非明らかにして欲しいものだ。
民主党は国家百年の計を踏まえておらず、明らかに党利党略に走っている。そのような態度は結局国民の信頼を失わせ、自らの命数を縮めることになるだろう。
そもそも1億2000万人の人口に対して、衆議院の定数が480というのは決して多くは無い数字だ。日本の議院維持費用がべらぼうに高いのは、議員定数が多いからではなく、議員歳費が多過ぎるからである。ある程度のボリュームの議員数は民主主義の維持のために不可欠である。
もし民主党が口で言うほど「身を切る覚悟」があるならば、議員歳費を大幅に削減すべきだろう。それをせずに、比例定数のみを削減しようとするのは、小選挙区選出の有力でなおかつ安泰な議員たちには、まったく犠牲を払う意思も覚悟もないと言っているのも同然である。
民主党が劣化した自民党になるならば、まだしも自民党の方がマシというものだ。
私も参議院選挙の投票先については考え直すことにする。