むしろ人間として扱わないでほしい

個人的には非常にタイムリーな話。
書店人失格 〜ある残念な書店員の話〜《天狼院通信》
地図を買い求めたご婦人におざなりな対応をしたら、ご婦人が数時間後に店に戻ってきて返品処理を要求したという話。
先日、東北某県に所要で出かけた時に、まあまあ広めの個人書店に入った。たまたま混雑する時間だったのか、レジには10人以上が並んでいた。店員は学生のような人が2名、ひとりはレジ打ちに入り、もうひとりはカウンターで延々とご婦人客の相手をしていた。
15分近く並んだ後、清算する段になってそのご婦人客の話が聞こえたのだが、本にまつわる世間話を嬉々としてしていた。
サービスとして一番いいのは、コンシェルジェのような専任者を置くことだろうが、むろん人件費の観点から言って多くの書店では現実的ではない。そのような時に、実際に書店が直面するのは不要不急の話を延々とするひとりの客と、ずらりと並んだ10人以上の客のどちらを優先させるのかという選択である。
そのご婦人の立場に立てば、書店が「誠実に」対応してくれて大満足であっただろうし、おそらくは経営者ではない相手をしていた学生アルバイトからすれば、「お客さんに満足していただいて、自分も幸福のおすそわけをいただいて充実感を得た」のかも知れない。しかしその間、レジに並んでいた10人以上の客たちは、2名でレジ打ち対応してくれていれば費やさずにすんでいた10分以上の時間を費やすことを余儀なくされたわけで、お客さん全体の満足度としてはどうなんだろうと思った。
そのご婦人客を切り捨てなかったことによってむしろマイナスになったのではないだろうか。
店員には直接向き合っている客以外にも客がいることを忘れて欲しくはないと思った。
僕は個々の客を過剰に人間として扱うサービス業者は出来る限り避けたいと思う。僕にしてみればモノを買うところはモノを買うだけであって、下調べも事前にするのが通常である以上、それ以上のコストを個々の人間にかけるサービス業は、結果的に自分のテリトリーが侵されることになるからである。
僕が書店の経営者であれば、いかに不自然なく客との話を切り上げるかを店員にはまず教えるだろうし、それを無視して「接客業のやりがい」を求める店員にはやめてもらうだろう。それは書店の経営を圧迫するというのみならず、総体としてのお客様の利益を毀損することになるからである。