リバタリアンの「底力」を見た

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080929AT3K2901M29092008.html
アメリカ下院の金融安定化法案否決だけど、まさかこれが否決されるなんて予想していた人ほとんどいないでしょ?
日本の新聞の社説も読みを外していたし。
それくらい「あり得ない」選択。
信用の収縮から流動性危機に陥っている時、バジョット・ルールで流動性に勢いをつける、こんなのは経済学の初歩の話。
もちろん庶民感情として、あんなに儲けていた連中をどうして公金を使って助けてやる必要があるのかと思うのも当然だし、日本でも不良債権処理の際、それでずるずると対応が遅れたことがあった。
それでも結局、経済社会が崩壊すれば困窮するのはまさしく庶民なので、本来、ポピュリストであればあるほど、金融安定化法案に賛成するのだろうと思うのだけど、そうはならないのが世の不思議。
思うに、ひょっとしたら、政治家の大半はこの程度の経済ガクも踏まえてはいないのではないかと思う。
政治家が法学士ばかりなのは、民主主義社会にとって不幸なことではあるまいか。
今回、アメリカ下院の共和党議員の大半と、民主党議員のうち100人程度が反対票を投じた。
詳細に見ていけば、動機のベクトルはまったく違うのではないか。
「金持ちに公金を投入するのはけしからん」という動機。
「自由と責任の原則をないがしろにするのはけしからん」という動機。
この両者は、福祉や社会保障の分野ではおそらく真っ向からぶつかりあうはずだが、今回の行動はたまたま一致したわけで、トホホな感もあるがそこが面白いといえば面白い。
面白いというか、私個人もこれで結構やばげな感じもあるのだが。練炭でも買っておくかみたいな。
ま、そういう思想的な動機というよりも、単に次の選挙で有権者の反発を買いたくないってのが先に来ているんだろうと思うが、もちろん中には思想を優先した結果、こうした選択になった人もいるだろう。
リバタリアンの凄みというか、狂気を見た思いがする。
私もリバタリアニズムにわりあい親和的な考えを持っているけど、この時によ、金融安定化法案を否決するなんて度胸はこれっぽちもねーよ、という。
あなた、ヒモを結ばないでバンジージャンプするなんて、それ度胸試しとゆーか、ただの自殺じゃあるまいか。
共和党は金持ち優遇とか、産業界に親和的ともいうけれど、そもそもを考えればあれはリンカーンの党なのであって、要は自由主義奴隷解放にも向かえば福祉政策も拒否するという、思っていたよりもずっと思想的な政党なのかもしれないね。
いやー、こわいこわい。
イデオロギーこわい。