指導として殴るということ

これだけコンプライアンスが言われている中で、未だに物理的な暴力が幅を利かせている業界があって、芸能界やスポーツ界、職人と呼ばれる人たちの業界はそうだろう。
先日、NHKスペシャルで「ONの時代」と称して、長嶋と王を取り上げていたが、長嶋の第一期監督時代の鉄拳制裁を、何の非難も反省もなく、プロとしての使命感の表れとして描いていた。明らかにパワーハラスメントであり、傷害である。
単に時代が変わったというのではなく、当時においてさえ事件化すれば刑法罪なのである。
暴力とプレッシャーがなければ育成できないかどうかについてはとりあえず、おいておくとして、フランス料理での修行や、アメリカのメジャーリーグで、暴力行為を通した育成が行われているだろうか?
あれだけ訴訟社会のアメリカで、監督が選手に対して暴力、特に物理的な暴力を加えて問題にならないということはあり得ない。
ついでに言うならば、楽天球団で野村監督と有力外国人選手の間で揉め事があったが、侮辱罪なり名誉毀損罪に問われるべきなのは本来、言った方、野村監督の方である。犯罪者が他人に倫理を説くという倒錯が罷り通っているのが日本であり、外国人からすれば余りにも無法すぎて、とても安心して暮らすことは出来ないだろう。
それでも日米が野球で全面対決したならば、彼我の実力差は明らかだ。
この種のナンセンスな暴力に対して、そういう文化圏の中で育ったロートルたちに対してはまだ弁護の余地があるにしても、マスメディア、特にNHKのような公営放送がそれを美談にしたてて暴力に加担することの罪は限りなく重い。「ONの時代」のプロデューサーは処分されてしかるべきだと思う。
先日、TBSの特番で島田紳介が若手芸人に対して「挨拶に来なかった」ことを理由として生放送中に暴力を振るった。この人には前科がある。
「挨拶に来るべきか」とか「生放送中にそういうことをするのはいかがなものか」等々の論点は、正直どうでもいい。問題はこういう傷害事件が発生した時に、公共の電波を預かるテレビ局が傷害事件として適切に対処しないことにある。
島田の前科である大阪の放送局で、別のタレントのマネージャー女性を殴打した事件でも、警察に連絡をしたのは被害者当人であり、それを見ていた関係者は傍観していたのみであった。
このリーガルマインドの欠落はいったいなんとしたものだろうか。