例の韓流問題について

現状、分かるところ思うところについて書いてみよう。


1.韓流人気は本物なのか、それとも作られたものなのか
本物の側面もあるだろうし、作られた側面もあると思う。これまで様々なブームがあった。自然発生的に生じたものもあったし、メディアが積極的に介在したものもあった。いずれにせよ、ある時点からは、メディアが介在することによって規模が拡大し、「ブーム」として定着するのであって、どの時点からそうなのかと見るかは判断が分かれるにせよ、メディアがある時点以後はマッチポンプ的になっているのは否めない。だが、それは韓流に限ったことではない。
「韓流は質がいいから売れる」
という言い方は、ドラマや演劇には工業製品のような決定的な性能差がない以上、他国の芸術に対して無知であり、すごく失礼な言い方だ。これは韓流が質が低いと言っているのではない。今日のようなブームになるには、質が高い低いは決定的な要因ではないと言っているのである。そもそも華流もモンゴル流もタイ流も知らない人が、韓流は質がいいから売れるというのがどれほど失礼なことか分からないのだとしたら、バイアスがかかっているのだとしか言いようがない。


2.韓国政府のソフトパワー重視政策は実在するか
する。別に秘密でも何でもない。これまでそれについて多くの記事が書かれてきたし(いちいちアーカイヴ保存したわけではないから紹介はしないが)、韓国の動向を継続して見てきた人なら常識とも言える話である。費用対効果的にどうかと思わないでもないが、韓国政府がそれが結果的に国益に寄与すると判断しているならば、その政策自体については他国がどうこう言える話ではない。
文化の海外振興については多くの国が補助的な政策を行っていて、ただ、ポップカルチャーをメインに据えている韓国は、珍しい例である。麻生内閣の提唱したアニメ振興が本格化すれば、アニメについては日本も同様になるのかも知れない。


3.韓流推しは経済合理性から説明できるか、そこに問題はないのか
上記のような政策を韓国政府がとり、後押しをしている以上、他国の放送局にとっては経済合理性が生じる。基本的には経済合理性から説明がつくことであるが、一部、おそらく韓国政府すら求めていないであろうような暴走があり、結果的にそれが視聴者の反発をかっていると思われる。あるいは「過剰に韓流推しを演出することによって国民的な反発を招く現場の妨害策」なのだろうかと深読みせざるを得ないが、基本的にテレビマンは考えが足りない人たちなので、そこまでは考えていないだろうと思う。
経済合理性があるとして、それで話は終わらない。そのうえでもなおも問題があるからである。まず、供給側の経済合理性を無視したダンピング自由貿易、自由競争の原則に違反すると言う点である。特に韓国側のコンテンツ市場は自由化されていないのだから、韓国政府はWTOに提訴されるべき問題である。ただ、この場合の韓国政府の利は経済的な利益というよりは、むしろ外交的な利益からなされているであろう。つまり経済的な得失であれば、韓国はおそらくむしろ損を被っている可能性が高く、シェアを拡大して他国のコンテンツ産業を潰すという意図も、少なくとも主眼にはない。しかし他国のコンテンツ産業に被害が生じるならば、やはり自由貿易を阻害しているとは言える。
個々の取引者に焦点をあてれば、不当に安価な価格は贈与である。当然そこには贈与税が発生する余地がある。現在、リベートなりこの種の意味の贈与税国税が補足していないのだとすれば、怠慢であろうし、テレビ局側がそれを隠蔽しているならば脱税と解釈される余地はある。


4.テレビ放送の公益性について
テレビ局自体は私企業であるが、電波は公共物である。従って、テレビ局には放送法によって不偏中立が義務付けられているし、特に外国の影響を被らないよう、資本についても法律の介入を受けている。そこに経済合理性があったとしても、韓国政府の意向が何らかの形で日本のテレビ局に反映しているとすれば、問題がないと言うことはない。
価格や流通経路、現場への指示、編集方針を含めて、疑惑があるなら明らかにすれば済む話であって、国会で調査委員会をもうけて調査すればいいのである。その結果問題がないというならそれでいいし、問題があると言うなら是正すればいいのである。