オバマ大統領の就任演説


英語全文
http://www.cnn.com/2009/POLITICS/01/20/obama.politics/index.html
わりあい、思い切ったことを言ったなという印象だ。
オバマ政権は、最近には類例のないほどの、未曾有の危機に直面している状態からスタートする。
自由、民主主義、その価値観、これらのタームは必ずと言っていいほど就任演説では語られるが、今回はその切実さが違う分だけ、より具体的な内容に踏み込んでいる。
アメリカには政治に参加することによって、国民統合がはかられる面があり、それだけに抽象的かつ、喫緊の話でもない事柄で政治対立が起きることがしばしばあった。
「小さな政府/大きな政府」論争もそのひとつであり、他には宗教的価値観の問題などもある。
それらは実際に政策的にどのような効果をもたらすかという以上に、自らのアイデンティティの問題であり、アメリカがどのような理想を持つべきかという抽象的な問題であった。
オバマは理想主義者だと評されるが、ここで語られたのはむしろ理想主義からの決別である。
黒猫であろうと白猫であろうとネズミをとる猫がいい猫だというような身もふたもないリアリズムへの回帰を、理想主義の衣を着せて、オバマは語っている。
極端な福祉主義が国家を破綻させることを私たちは1970年代の経験から知っている。
極端な市場主義が社会を荒廃させることを私たちは1990年代の経験から知っている。
イデオロギーや人生観を絡めた「小さな政府/大きな政府」論争からの決別をオバマは語っているのであり、他国の水準から言えば常識的とも平均的とも言えるこの考えにアメリカ合衆国大統領がたつことによって、ようやくアメリカはスタートラインにたつのだとも言えるし、アメリカのプレゼンスの大きさを思えば、80年代以来歪められてきた市場主義への修正がようやく世界レベルで計られるのだとも言える。
オバマがやろうとしていることは一言で言うならば、国民国家の再構築であり、今日の世界では国家主義は貧者の側に立つのである。
ただ、サマーズが政権に入ったことの意味がこれからどう作用していくのかが、やや疑問である。