学習院離れ?

悠仁親王殿下が来年4月より、お茶の水女子大付属幼稚園に入園されるそうだ。
http://www.asahi.com/national/update/1203/TKY200912020471.html
月日がたつのは早いなと感じるとともに、なぜ学習院ではないのかと驚きを感じた。
秋篠宮家では先だって、眞子内親王殿下が国際基督教大学に合格なさったとの報もあり、ご両親とも学習院ご卒業であることを思えば、やや奇異な感じもしたが、大学ならばご自分でやりたいこともおありなのだろう。
しかし幼稚園は当人というよりは周囲の選択で選ばれるわけで、お茶の水女子大付属幼稚園には3年間通われることを前提として入園されるようだ。
悠仁親王殿下は言うまでもなく、他の宮様方とは違い、将来、天皇陛下となられる可能性が非常に高い方だ。その教育には特に細心の注意が必要とされる。
伝統校には伝統校なればこその経験の蓄積があるのであって、ひとりの男の子として扱い、また、皇族としても扱う、そういう微妙な気配りに長けていると思われる。
私が思い出したのは英国のチャールズ皇太子の例だ。父、エディンバラ公の教育方針もあって、スパルタ式教育を掲げたゴードンストンで彼は学んだ。同校の創設者のクルト・ハーンはドイツの教育者で、ナチスドイツに反対し、英国に亡命した信念の人である。
彼の教育方針にエディンバラ公は共鳴し、未来の国王を彼の下で鍛え上げようとしたのだが、これはまったく失敗だった。中産階級が多い同校の子弟の中で、王室出身のチャールズは孤立し、陰惨極まりない苛めを受けたからである。
エディンバラ公ギリシアデンマークの王子だが、幼少の頃から亡命生活を送り、帰る家もない生活を送っている。そうした苦労の中で、軍隊生活を通して自らを鍛え上げた人だが、苦労人なればこそ息子には厳しく接したようだ。彼が味わった苦労、その中で克己してきた努力を思えば、どうしても王室に生まれたチャールズは甘ったれているように思えたのだろう。
家庭内の命令権については女王は一切を夫に委任していたから、チャールズには逃げ場は無かった。彼は本来、マチズモとは無縁の性格であるのに、マチズモの権化のような父親の圧制下で、個性を押し殺して生きてこなければならなかったのである。
このことを教訓として、チャールズは自分のふたりの息子には、貴族趣味と非難されようが、親ばかと言われようが少なくとも上流階級の子弟教育には経験と蓄積があるイートンで教育を受けさせた。
このことについてはエディンバラ公と皇太子夫妻の間で考えの対立があったと聞いているが、チャールズが少年時代、いかに苦労したかを聞いていたダイアナもこれについては夫に全面的に加担したという。
お茶の水女子大付属幼稚園は、悠仁親王殿下を好奇や嫉妬の眼差しから守れるだろうか。
あるいは逆に、垣根を作りすぎて、殿下をスポイルしてしまうようなことはないだろうか。
出来るかも知れない。いや、何よりご両親がよくよく考えられたうえでの選択だ、おそらく大丈夫なのだろうとは思う。しかしわざわざリスクをとらないでも良いではないかと思わないでもない。
学習院は特殊なのだ。その特殊さの中で育てば、その特殊さがかえって分からないのかも知れない。
殿下が成長されてゆかれる上で、同年の子たちと争ったり、嫌な思いをしたり、力をあわせて試練を乗り越えたり、そういうことも確かに大事である。
しかし殿下が背負われているものは余りにも重く、余りにも特殊だ。日本でただひとりなのだ。普通の子として生きてゆくことはあらかじめ許されていない。
もう決まったことならば、いかんともしがたいが、老婆の繰言めいたことと笑われてもよいが、関係者は今一度ふまえて欲しい。特殊な運命を背負った子から、運命をとりのぞくことはできない。その運命を背負わせたうえで、幸福な子供時代を過ごしていただくこと、そのことにこそ留意して欲しい。