最高裁は逸脱行為を犯せない

詳細な論をなしながら基本認識を欠いているために全体としてはトンデモとなっていると指摘したこちらのページだが、このトンデモの記述を受けて、
http://d.hatena.ne.jp/imajou/20081208/1228727923
リンク先の記述がなされている。
最高裁が逸脱行為をなしたと主張するのは言論の範囲だろうが、問題は意見と事実を分けて書いていない点で、リンク先の人の主張は徹頭徹尾、個人の意見に過ぎない。
最高裁が法解釈において絶対の権威であるとの事実認識に立てば、最高裁が逸脱行為を「犯せない」ことは自明であるのだが、この人もまた、最高裁が単なる one of them であるかのように誤解しているとしか読み取れない(誤解をしていないならば、上記の意見が意見として提示された旨のエクスキュースがあるはずである)。
国籍法3条一項違憲判決においては、憲法14条と憲法10条の示す「国民」の範囲について、この事案において適用される部分が示されている。
確かに異論が生じる論点ではあるが、これは学釈上も常識的な解釈であり、司法解釈としてはすでに判例として示された以上、新たなる最高裁判例が生じるまでは絶対である。
ただし、今回のような婚外子国籍確認訴訟における判例としては、既に国籍法も改正されたことから具体的な訴訟が生じる可能性自体が限りなくゼロに近く(ゼロと言い切ってもいいのだが、未来のことはすべて予想できるわけではないので)、こうしたケースについてはこの判例はほぼ永久的に確定したと言っていい。
議論の余地は、あくまで個人同士の見解という、非公式かつ非効力的な場所でしか生じ得ない。
また、該当の最高裁判決では、両性の平等についての言及もある。
親権を持つ親の立場に転じて事案を眺めれば、母親、つまり女性側にだけ生後認知をした非嫡出かつ非準正の自分の子に日本国籍をとらせる権利があり、父親、つまり男性にそれがないのは、両性の平等にそぐわない、つまり性差別であることも指摘がなされている。
両性の平等自体は、憲法24条でも規定されているが、憲法14条によっても担保されているのは明白で、どのみち旧国籍法の問題になった規定が憲法違反であるのは疑いようもない。
それを改めたいのであれば憲法自体を改変しなければならないが、法の下の平等や、両性の平等を、法の下の不平等や両性の不平等に改めるなど、どれほど穏当に言ったところでキチガイ沙汰と評するよりない。
ましてこうした基本的人権に関わる部分は現行憲法では改変が拒否されていると見るのが通常であって、通常の改正手続き(むろん国民投票法自体が現状では欠けているわけだが)では改変は不可能だろうと言うしかない。
革命などの非常の手段によってしか、改変は出来ず、それを行う人は言葉の正確な意味において、犯罪者であり国賊と言うしかない。
そうした基本的人権の尊重すら無視した改変がなされることはもちろんだが、そのような主張がなされること自体、日本の政治的不安定化と国際的な地位の毀損をもたらす売国的な行為であると評する。