自省の季節

北京五輪以来、中国で反韓意識が強まっていて、いったいこれはなぜなのか、という議論が韓国で起きている。これについては政府レベルで対策を検討しているようで、何かしらの策がおいおいまとめられるだろうが、案外、いわゆるネット右翼の言う、「傲慢な韓国人」が原因なのではないかと思う。
いわゆる韓流ドラマなど、韓国は文化輸出に熱心だが、インターネットの伸張と、皮肉にもそうした文化輸出の姿勢が、韓国インサイドの論調、他国から見れば偏ったその視点が諸外国の国民の目につく結果を招き、反感を形成しているのではないかと思う。
たとえば先日話題になっていたこの記事、
米自動車市場:韓日メーカー、販売台数で米大手3社抜く
これは朝鮮日報の記事だが、日本人であればおそらくまず日韓の自動車メーカーがまとめられていることに非常に恣意的なものを感じるだろう。朝鮮日報の意図はどうであれ、非常に国内向けの見出しであることは確かだ。
同じようなもので、同じく朝鮮日報から、
日本通貨危機時、韓国が50億ドル支援へ
という記事を挙げておく。
この見出しは間違いではないが厳密には事実とは言えない。これは日韓両国政府が通貨危機時に韓国は50億ドル、日本は100億ドルを互いに融通しあうという内容の記事で、額で言っても日本の方が大きいし、どれほど過剰に言ったところで「相互支援」である。しかも実際には、踏み込んで言えば、日本側には韓国から支援を受ける必要はなく(日本の外貨準備高は負債なしで充分以上の額を示しているし、しかも日本の通貨当局が誘導したがるのは円高ではなく円安なので、ドルが致命的に必要だと言うわけではない)、実際には韓国の為替市場がヘッジファンドに狙われるのを予防する意味合いが強い。
こうしたものから少なくとも私は非常に肥大した自意識を見出すし、おそらく多くの日本人もそうだろう。
だからと言って、これを理由にして反韓にはならないが、まともなビジネスライクな話が果たして出来る相手なのかどうか、不安要素にはなる。
国内向けであればほとんど問題がないかも知れないこうした記事構成も、朝鮮日報が日本語版を提供しているがために、こうして日本人の目についてしまう。
これに似たようなことが、あちらこちらで起きているのだ。
ベンジャミン・ミルフォード氏がどれほど独創的なことを言ったところで、その言責は氏ひとりのものだが、韓国に限らず、国際社会において比較的なじみが薄い国の国民はいずれもそうなのだが、どうしても全称命題で見られてしまう。
よく言われる起源説のように、実際には学会からは相手にされていない卑史のようなものでも、ある韓国人がウェブサイトを作ったり、掲示板に精力的に書き込めば、それは「韓国人の意見」になってしまう。
それは不当な見方かも知れないが、現にそういう傾向があることをひとりひとりの韓国人は踏まえて言動をかえりみるべきなのだ。
実際にはそうした卑史、他国民への侮辱に同調する韓国人の意見はネット上では頻繁に見られるのに対して、それを批判する声はいかにも小さいように思う。
偏見は偏見ではないのかも知れないのだ。


ソウル新聞で非常に感銘を受けた論説記事があった。
http://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20080918030001

(邦訳、機械翻訳を通しているので細部は正確ではない)
北京五輪において、嫌韓機運を目の当たりにして、私たちは非常に戸惑っている。
すでに専門家たちによる分析が幾つも提示されている。
韓国で起きた聖火リレー反対運動が原因ではないかということ。
ネット上に見られる韓国についての虚偽情報が原因ではないかという見方もある。
経済発展に伴って、勢力を増した中国のナショナリストたちが韓国を貶めたいのだとする考えもある。


それぞれに説得力がある。
しかしこれらは、原因を政治的な理由や中国内部の問題に求めている点で、やや安易と言わざるを得ない。
嫌韓が中国だけで起きているならば、そうした見方も妥当かもしれないが、事態はもっと複雑だ。
近年の報道では、日本でも、モンゴルでも、あるいはベトナムなどの東南アジアでも、韓国と韓国人に対する悪感情は強まっているらしい。
私たちは、原因を外部に求めるのではなく、まずは自分たち自身のことを省みる必要がある。


夏休み、私は東南アジアのリゾートで過ごしたが、そこに勤める従業員たちは最初は愛想がよかったのに、私が韓国人だと分かると、非常に冷淡な態度になった。
後々、分かったのだが、ホテルの部屋やダイニングで見られる韓国人旅行者たちの振る舞いは、醜態の域すら越えて、蛮行と呼ばれるのが適当なほどだった。
部屋にキムチやコチュジャンを持ち込む(注、匂いが残り営業妨害になる)、ラーメンを作って食べるのはいいけど食い散らかして後始末をしない、フロントで大人数が大声で従業員を急かし、ほとんど脅迫的にまで迫る、格式あるレストランにホットパンツ、袖なしシャツ、野球帽といったルーズな格好で出入りをする、子供が騒ぎ立てても注意もしない、売春婦を買って、ホテルへ連れ込むのを従業員に制止されれば悪態をつく、むかしの説話にあるような傍若無人が一部の韓国人観光客によって引き起こされていたのだ。


この種の話は何も海外でのみ起きているのではない。
韓国在住のアジア人労働者や留学生に対する無礼は一般の人たちの想像の域を越えている。
私が勤める大学に在籍する何人かの留学生の証言によれば、買い物に行けば、「触るな!あっちへいけ!」と侮蔑的な表現で怒鳴られた経験がある人は、ひとりふたりどころではなかった。
すべての韓国人がこうだというわけではないが、少なくとも一部の韓国人のこうした振る舞いは、一番近しい友でさえ、巨大な敵にしてしまっている。
こうしたことはまさしく、愚かしい亡国的な振る舞いと言わざるを得ない。


イ・ミョンバク大統領が8・15祝辞で国家ブランド委員会の設置計画を明らかにした。
国家ブランド価値を引き上げることは確かに重要視されるべき政策である。
低い国家イメージのせいで、企業は良い製品を作っても適正価格で売ることが出来ず、国民は外国でカネを落としながらも、人間らしい扱いを受けられない、そうしたことが実際にあるからだ。
国家ブランド評価機関アノルク-GMIが発表した韓国の国家ブランド価値は国内総生産の37%に過ぎず、日本の224%に比較すれば非常に低い水準にとどまっている。
国家順位では39ヶ国中32位だ。
低評価された国家ブランド価値を引き上げるためには、国家イメージを是正しようとする国家レベルでの取り組みが必要だろう。
そしてそれは、単に広告や広報、イメージ戦略だけで成功できるこれが広告や広報、イメージ操作だけでなし得ることではない。
地に落ちている韓国の国家ブランドを高めるためには、どのようにすべきか戦術論を問う前に、どのようにあるべきか実際の内容を変えることをしなければならない。
外国のせいにするのではなく、まず自分たちがいったいどのような人たちであるのかを見据えなければならない。
国民の品位がおぼつかなくて、敬愛される国家ブランドが構築されるはずがない。
今の子供たちに必要なのは、英語教育以前に相手に対する礼儀を教えることだろう。
近々、設置されるだろう国家ブランド委員会は、この点に留意して運営されなければならない。

キム・ムゴン東国(トングク)大新聞放送科教授