企業の言語戦略

三木谷浩史・楽天会長兼社長――英語ができない役員は2年後にクビにします(1)
楽天の社内公用語英語化の動きが批判もされているようだが、それを愚かだというならば楽天に入社したり、株式を持たなければいいのである。
今後の日本市場の成長性に限界があるのは確かであるし、世界レベルでの生産性でも日本国内で日本人のみを雇用している限りは競争性が著しく劣ることになる。
日本市場が言語障壁によってある程度守られているのは確かだが、製造業が国際競争力を縮小させてゆくのと同様に、サービス業、特にインターネット産業においても日本語は絶対の防波堤ではない。
極端な話、楽天の本社がインドネシアにあり、社員がインドネシア人ならば、固定費は単純に考えて十分の一以下に圧縮することが可能だろう。不正確な英語での販売は、明らかにハンディキャップであるが、それでも価格が十分の一に圧縮できるなら、「日本市場における日本語の優位」などいかほどのものでもない。
まして、その程度のものならばトランスレイターを導入すれば済む話である。
止まっているだけでは日本市場さえ守れないだろう。
楽天の三木谷氏が言っているのは、少なくとも経営レベルにおいては、英語は必要条件であるということである。経営レベルに求められる能力はそれだけではないが、英語さえできないようなら、必要条件を満たしていないということであって、それは今後、楽天を国際化してゆくうえで、言語障壁を取り除くことが経営的に必須だと判断しているということである。
さてここでいう「英語が出来る」とは何であるのかをおそらく意図的にぼかしているのだろうが、三木谷氏の要求水準はおそらく実際にはかなり低い。
オールマイティな英語力を求めているのではなく、「社内での会話において英語での意思疎通が可能なレベル」程度であろうと思うし、楽天に入社するような人材であれば、そうした環境に放り込まれれば半年もせずに習得可能であろうと思う。
業務で使う用語などはおいおい統一されてゆくであろうし、使っていけば嫌でも覚える。
半年くらいは言いたいことも言えない隔靴掻痒な状態になるだろうが、「言いたいこと、言わなければならないこと」と言うのは基本的に変わらないので言い回しを覚えてしまえば応用はたやすい。
三木谷氏は2年の猶予を見ているようだが、おそらく遅くても1年以内にはやってしまえばそう大きな混乱もなく英語公用語化は出来ているだろう。それこそ表現的に分からないところがあるならば、日本語で聞けばいいだけの話であるし。