何度目だのダイナミズム

自公両党で、参議院の可否を覆せる絶対安定多数の320議席を越えて、自公両党が衆議院議席を占めることになった。
今回私は選挙区でも比例でも民主党とその候補に投票したが、2009年の民主党政権交代、2005年の郵政選挙とそれぞれ地滑り的な結果になった総選挙では、私は勝った方に投票していたから、今回は敗れた側に立ってみると、この選挙制度の怖さを感じずにはいられない。
もちろん民主党は負けるだろうとは予想はしていたが、あわよくば130議席程度、できれば110議席程度、最低でも70議席程度はいくだろう、そこで踏みとどまってほしいと願っていたが、結果は59議席、目もくらむような大敗である。
2009年総選挙では民主党は308議席を獲得したから、その後、分裂があったとはいえ、1/6以下に縮小したわけである。
私は基本的に、「政権交代のダイナミズムと、少数意見の反映を両立させる現行の小選挙区比例代表並立制」を支持していたのだが、3度連続してこうも滅茶苦茶な地滑り的な結果を見て、手直しはなされるべきだろうと思っている。
小選挙区制を採用している国は多いが、その代表である英米がどうしてここまで不安定な結果になるのを抑制できているのかと言えば、7割がたの選挙区では結果はあらかじめ見えているからである。保守党の地盤では何百年も保守党が勝っているし、労働党の地盤では労働党以外の候補が勝てる余地はほとんどない。3割がたの選挙区が勝敗が時々に移動して、それが政権交代か維持かを決定する。日本の場合、逆にほとんどがこのスウィング・ディストリトに相当するだろう。
全体としてスタビライザーとして機能する歴史的な要件が欠けているのである。
自民、民主の二大政党が負けた時でもせめて120議席程度は維持できなければ、次代を担う人材の育成さえままならない。自民と民主が120程度を基礎議席として持ち、100議席程度が時々に移動する形でないと、次回の政権党としての準備もおぼつかない。
小選挙区のダイナミズム性を緩和するために比例代表制を強化してはどうかとは以前から言っていたが、民主党岡田克也氏などは結局は小選挙区は二大政党に有利なのだと思っているのかどうか、全議席小選挙区にするべきだとの考えを提示していた。
もしそれが実現していたなら、今回、民主党は消滅していたであろう。
先日、松下政経塾に入塾希望者が減っているというニュースをきいた。さもありなんと思う。
以前は、地縁血縁の複合体の中から候補者が擁立される中、新人が二大政党から指名を獲得するのはごく困難だった。松下政経塾のつてでも頼らなければどうにもならなかったのだ。
今は、150議席程度、毎回、新人が入れ替わっている。世襲が多い自民党でさえ、新人が指名を獲得するのははるかに容易になっている。すぐに候補者になれるなら、なにもわざわざ政経塾に入る必要はない。
ただしそうやって地滑りで当選した新人候補は、ほとんどが次の選挙で破れるだけの話である。
この途方もない人材の蕩尽。
繰り返される焦土。なすすべもなく立ち尽くすばかりである。
政権交代のダイナミズムはそれでいいとしても、この蕩尽をなんとかするべく自民と民主は真剣に考えるべきではないだろうか。