フェアな家計

http://d.hatena.ne.jp/iteau/20141123/p1
前回の記事を受けての話。
元記事の相談者の発言で、僕が引っ掛かったのはこの部分。

私は恋人がいることの幸福さは、一部理解していると思います。子供の笑顔に心が躍るような感覚も一部分かります。だから 、結婚、出産・育児において女性の負担ばかりが多くなりやすいことに不満なのにもかかわらず、一方で中途半端に家庭を夢見る心もあって苦しいのだと思います。

男やったこともない癖に、よう、男の負担が分かりますなあ、と乾いた感想を抱く。ここが特に顕著なのだけれど、この人の言うフェアが自分の都合ばかりを言っていて、手前勝手なんじゃないかというニュアンスを得たから、多くの読者から反発を被ったのではないかと思う。
そこまでフェアに取りつかれているなら、正直言って共同生活はおろか、誰かと友人関係を結ぶのも難しいのではないかと思う。結論は、今まで通り一人でいた方がいいんじゃないですか、としか言いようがない。
とは言え、僕は「男女平等」志向の人間だから、専業主婦世帯みたいなものがいいとは全然思わない。
人それぞれフェアの概念が違うという前提を踏まえたうえで、あまりにもその概念が違い過ぎるとそもそも一緒には暮らせないだろうけれど、ある程度すりあわせが出来る相手について言えば、それは両者が互いにフェアと言う満足感を得られるならばそれに越したことは無い。
ただ、この相談者が盲点になっているのは、家計がブラックボックス化しているということで、やり方はどうであれ家計はフェアに分担しましょうと言う合意があるにしても、家計の中身でいちいち対立が発生しがちなのだ。
個人の所得を、家計とそれ以外と、家庭内において公共と私有にはっきりと区分する以上、家計は夫婦の間において公共になるのであり、その中の項目はいちいち相手側のチェックと同意を必要とする。
一方が、「え?これは必需品でしょ。家計にいれるべきものでしょ」と考えても、相手側が「いいやこんなものは要らない。趣味の範疇です。欲しいなら家計外の自分の収入で払ってください」と言うことがほとんどありとあらゆる場面で生じることになる。
例えば夫の晩酌。妻が家庭内では酒を飲まないならば無駄な支出以外には思えないだろう。
あるいは美容院費。夫が月一度、千円の散髪で済ませている時に、妻が月二度、合計一万円を美容院に支払っているならば、夫は無駄に九千円を支払わされていることになる。
負担をかける方は、生活していくうえで、生きていくうえで必要でしょうと思っても、本当のギリギリのところでは実際にはそうではない。単に体面や自己評価のためにそうしているというだけのことだ。
うちはここまで偏執的にフェアを求めているわけではないのだが、揉めるのを防ぐために大原則をふたつたてていた。ひとつは負担の少ない方に合わせるということ。例えば一方が電車通勤、一方が自動車通勤ならば自動車は、電車通勤の方は無くても構わないのだから、自動車通勤している方が自動車維持費を家計外から負担する。その代り負担している側が新車を買おうが外車を買おうが一切文句は言わない。セダンだったら買い物に不便だからミニバンにしてよとか言う発言権はカネを負担していない側にはない。
そしてもうひとつの大原則は、大枠を決めた後は日常生活レベルではフェアとかそういうことは一切求めないということである。
自分がケーキを食べたいと思ったから、自分の個人収入の中からケーキを買いましたというのはいいにしても、一人分しか買って来ないならもう二人でいる意味がないでしょう。
と言うかその小さなことで譲れるならば、大きなことだって譲れるのだ。